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第8回/感じるな、考えろ!

■風邪

現在、重森は風邪を引いております。鼻水とくしゃみが立て続けに出てきます。大変です。

風邪ぐらい気合をいれてすぐに治せないならば、人類学を学ぶ者として失格だと思います。ですが、自分に暗示をかけて、免疫力を高めて、風邪の治りを早くすることはなかなか難しいです。

さっきから、目をつぶって「鼻水止まる、鼻水止まる」と心の中で静かに唱えているのですが、鼻水は止まりません(笑)。重森はまだ、自分(の体と脳)を騙すことが下手です。

■「思い込み」の力

聞くところによれば、ガン患者に、ガン細胞が小さくなるようイメージさせると、治療経過が良いそうです。まさに、病は気から、です。いかに「思い込み」は人間の生活に深く関わっているか思い知らされます。

「思い込み」という言葉は、誤解を招きがちかもしれません。この言葉は、どこかに「正しい認識のあり方」があるかのような印象を与えます。

世界がどうしようもなくそのようなものとしてしか感じられないこと。問答無用にある事柄を正当と思い、そして絶対にその正当性を疑えないこと。たとえ、疑えたとしても、そこから抜け出すことに否応なく抵抗を感じてしまうこと。

上記のような状態を強調して、重森は、「思い込み」という言葉を使っております。なんらかの「思い込み」の渦中にいる人は、自らの「思い込み」を、突き放して見ることができない。すなわち、なんらかの「思い込み」に呪縛されまくっている最中の人には、その「思い込み」こそが、絶対的にリアルなのだ(絶対に否定できない)、ということです。

たとえば、親族を事故で亡くしたAさんが、その不幸の出来事を、隣人が使用した妖術のせいにしていたとします。「妖術なんてなにアホなこと言っているの」と我々はAさんを「「思い込み」の激しい人々だ」として見なすことができるかもしれません。

しかし、重要なことは、あくまでも妖術の存在している世界に住むAさんは、妖術にたいして、否定しようのないリアリティーを感じている、ということです。妖術なんて迷信だ、とAさんに言っても、Aさんが感じるリアリティーの内容を変えることは、難しいと思われます。Aさんにとって、世界はそういうふうにできていると言えます。

■「世界の見え方」を変える方法

どうしてもそう感じてしまう。このリアルな確信、絶対的なリアリティーは、どのようにしたら変更することができるのでしょうか。これが重森の疑問です。

「目の前から歩いてくる人は、自分に敵意をもっている。」

高校時代の重森は、上記のような「思い込み」の渦中にいました。そのため、あまりの恐怖と緊張で、道路を歩くにも一苦労の状態でした。たまに緊張しすぎて足がぎこちなくなり、つまづきました。

このような絶対的なリアリティーをどうしたら無視できるのか。そして、どのようにすれば別のリアリティーを感じることができるようになれるのか。このような疑問が、重森を人類学に向かわせています。

前回では、演技の話をしました。自分が感じたい現実を実現させるために、あえて、すでに「自らが感じたい現実」に生きてしまっているかのように、行動する、すなわち、演技をする、という話でした。その際に、問題となってくるのがダブル・バインドという厄介な状況でした。

ダブル・バインドで他人を苦しめないためには、本音一筋で生きるのが一番だと思われます。嫌いな奴とは話をせず、攻撃されたと思ったら報復し、好きな人には面と向かって好きという。本音一筋で生きるこのような人間は、なかなか爽やかな奴のように思えます。

しかし、このような本音モードで生きることは、リスクが大きすぎます。特に、「自分は憎まれている」という変な「思い込み」に呪縛されている重森のような人間にとっては、破滅ものです。

相手の意図がどんなものであれ、「自分は憎まれている」という「思い込み」のフィルターを経てしまうと、全ての他人の言動は、自分を傷つけるものとして、立ち現われてきます。そして、その立ち現われてきたリアルな印象を、そのまま認めてしまえば、「思い込み」通りの現実が実現されてしまいます。

相手が差し伸べた右手を、「自分に力較べを挑んでいる」として受け止め、握手したとたんに、「俺の力を思い知らせてやる!」とばかりに、相手に背負い投げを決めてしまうと、相手は怒ります。そして、反撃をしてきます。「自分に挑んできている」という「思い込み」に生きている人は、相手の反撃を見てますます「自分に挑んできている」という「思い込み」を強化することになります。

「思い込み」は本当に困った奴です。しかし、自らの「思い込み」をできるだけ疑い、好ましい現実を実現させようとする際に生じる可能性のあるダブル・バインドを、どのようにしたら、回避することができるのか、その解決策はまだ見つかっておりません。だれか良い方法を知っているかたがいましたら、重森に教えてください。

■考えるな、感じろ!

その昔、ある武術家が、「考えるな、感じろ!」と言いました。頭で考えてばかりの重森は、よく周囲の人々に、「感じる体」になれば?とかなんとか言われます。要するに、考えすぎなので、もっと肩の力を抜いて、ゆったり構えてみては? という助言です。

できれば、是非とも「感じる体」方面に突っ走って、頭を働かせることは極力やめにしたのですが、ちょっと油断すると、重森は、「思い込み」通りの現実を実現させかねません。「考えるな、感じろ!」という格言に従って、感じてばかりだと、他人の言動を悪い方に悪い方に「感じて」しまい、悪い方に悪い方に反応してしまうのです。やっぱり、重森は自分の感受性を疑い、常に、「思い込み」が発動するのを監視しなければなりません。「考えるな、感じろ!」よりも、「感じるな、考えろ!」です。

ああ、でも、音楽に身を任せて、ゆらゆら動いているのはいいですね。気持ちいいです。初めて行ったクラブ(ケニアのですが)でそう思いました。

今日は、風邪を引いているので、この辺で終わりたいと思います。




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