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第二回/食欲の話。
 いやもう何とも太陽は天高く。夏ですね。蝉が鳴いてます。非常に、暑いです。熊本もだけど、京都も盆地でして、湿度が高いらしい。空気がもったり重いです。何でこんな暮らしにくいところに昔の人は都を作ったのか、前から不思議でしかたないんだけど。
 更新遅れてしまいましたが、2回目です。食欲なくしがちな夏だから、というわけでもないんですけど、今回は開高健の料理(?)エッセイ「小説家のメニュー」を取りあげて何やかやとお話を。いきなりエッセイって言うのも何ですけど、まあ、…まあ。…何も言えないんですけどまあ。

 開高健というと、長編なら「輝ける闇」とか「夏の闇」とか。短編なら「裸の王様」とか「パニック」とかで有名な方ですね。いや、自分は長編はちゃんと読んだこと無いんですけど、とにかく。この人の文章って、濃いです。特にエッセイになると。悪くいえば、大げさ、やりすぎじゃないかって言うような。
 初めて読むときとかは人によってはそういうところ、気になるかも知れないですけど、実は自分は割と以前から読んでたのでとくに抵抗とか無く開高節を”来た来た”って感じで喜んだりして。プロフィールの方には高校の頃まではあまり本読んでなかったと書いてはいたけど、この人の文章は割と読んでいました、父親が読んでいたので。というのもうちの父親、釣りするんですけど、開高健って釣り好きの間ではかなり支持されている作家のようで。僕はよく知らないですけど釣り雑誌のエッセイとかコラムとか、この人の文体を今でもかなり受けているそうです。

 しかも彼は、釣りに限らず、やたらと博識のようで、この「小説家のメニュー」でもそれは発揮されまくりです。例えば出てくる料理だけ採ってもすごい。今この本の初めのほうの何ページかを読み返してみたんだけど、なんかのっけからネズミの煮物(ベトナム)とか丸焼き(ペルー)とか。かと思えばモスクワのアイスクリームとかベルギーのチョコレートソースとか栄太楼のあんみつとか。でもやっぱりピラニアの刺身とか鍋物とか。あとリスのパイとかおいしいドリアンの見分け方とかとかとか・・・こういっては何だけど、かなり雑食。しかもここに書いたもので、リスのパイ以外は全部現地で実際に食べたもの。よって開高さんの筆ものりまくるわけです。
 例えば冒頭のネズミ煮のところの描写なんてこんな感じ。

(…)薄い塩味のきいたその肉は、柔らかくてしかも張りがあり、淡白でありながらとても奥深い味をしていた。
「うまい!」
とわたしは思わず嘆声をもらしたのだが、(…)


 濃いんです。でもこのあと傍らに転がるネズミの頭を見て開高さん吐きそうになっちゃうんですけど。
 でもこの人の味覚の表現って常に、というと誤解があるかも知れないけど、こんな調子でエネルギーに充ち満ちてます。うん、こう言い切ってしまうと何だけど、でもだいたいこんな雰囲気だと思っていいと思う。「…!」とか「…!?」とかが頻出します。そしてそのような修辞で修飾される、多くのげてもの珍味を含む料理群。なんだか暴力的なものを感じます。

 でもこのエッセイ、この暴力的な表現がやたらお腹に訴えるんです。これを読んでると、お腹が減ってる減ってないにかかわらず、何か口に入れたくなる。それも、ジャンクフードとか何か手軽なものではなくて、食い応えのある、そして少し毒々しい感じのするようなもの。或いは、食欲がいつもと違う、少し暴力的なあたりから湧いてくる、と言うか。
 この本に載ってる「珍味」にいくらか近いようなもので、身近にあるもの、例えばコノワタとかサザエのツノとかいった内臓周りのものとか、或いはあまり口にすることの出来ないヒラメの縁側とか。そういったようなものを食べる時って、何というか、食べてやるぞ!みたいな。貴重なものを食べられるからと言った理由からだけではなく、だからといってそれが何故かは解らないけど、でも普通ものを食べる時には必要の無いようなエネルギーを込めてしまうことがあると思う。それこそが生のエネルギーと我々の呼ぶものなのである!とかいう話ではないんですけど、でもそういうエネルギーって、よく言えば開放的でシンプル、悪くいえば盲目的で下品であって、そして何れにしても、かっこいいと思うんです。
 このエッセイに限らず、開高さんのエッセイにはこういったかっこよさをよく感じます。多くの場所に行っていて、多くの食べ物や人やいろいろにあって、何か目標があったりするわけではなく、ただ目の前のことに集中してギラギラしてる感じ。そしてそうだからこそ、読後にちょっと、喪失感というか、どこか寂しい感じもあって。すごく魅力的に感じてしまいます。

 …どうだろうか。独り善がりになりすぎたかも。ご意見ご苦情など冷や汗もので受付け致します。
 では今回はこの辺で。いずれにしても栄養はしっかり採っていこうということで。


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